ローマ帝国社会の家族構成を理解するのは、新約聖書をより深く理解する上で非常に重要です。
ローマ帝国社会の家族構成
ローマ帝国社会の家族構成は、夫、妻、子供、親戚、さらに奴隷を含めて成り立っていました。このような理由で、使徒パウロは手紙の中で、夫婦の関係、親子関係、主人と奴隷の関係を同列に書いているのです。奴隷制度については、ローマ帝国の階級社会で説明しています。
アメリカで奴隷制度があった時代、クリスチャンの間で奴隷制度の是非が議論されました。あるクリスチャンは、新約聖書が奴隷制度を是認しているという理由で自分が奴隷を持っていることを正当化していました。非常に興味深いです。
結婚の概念
古代ギリシャでは、カップルは婚約を結び、女性の父親は結婚の保証を約束していました。その保証として女性は結婚持参金をもって結婚しました。しかし、ローマ帝国下ではこのような婚約は、効力がないものになっていきます。女性は、結婚しても法律的には夫の家族の一員ではなく、自分の父親の家族の一員として考えられていました。
女性は、13-15歳くらいで結婚をすることが勧められ男性の結婚年齢は遅く30歳でした。しかし、ユダヤ社会では、男性は18歳位まで結婚するように奨励されていました。花嫁は、婚礼の前に風呂に入り、特別なドレスを着て準備をしました。この婚礼の慣習が、たとえとしてエペソ5章26-27節、黙示録21章2節で用いられています。
初期のローマ帝国では、子供の死亡率が非常に高かったようです。そのため皇帝アウグステゥスは、家族をローマの法律下においたのです。その目的は、公共のモラルを保つためではなく出生率を高めるためでした。経済発展の観点から出生率を高めるために、結婚を奨励したのです。
子供の立場
1世紀のローマ帝国下のユダヤ社会では、小さな子供たちは、家族の中で一番下の地位に位置づけられていました。その家族が奴隷を雇っていたとしても、子供の地位は奴隷よりも下でした。なぜなら小さな子供は、家事や家庭の雑務に、まったく貢献できないからです。
このような背景があり、主イエス様は「自分を低くして、子供のようになる人が、天の国でいちばん偉いのだ」と言ったのです(マタイ18章1‐5節)。この聖句は、子供の純粋ゆえに子供には罪がないとも解釈されますが、そうではないと私は思います。主イエス様は、子供のようにへりくだり、自分を低くして人に仕えることの重要さを強調しているのではないでしょうか。
ちなみに異邦人の間では、女の子の赤ちゃんは捨てられることが多かったという記録が残っています。女子は、嫁入りのために多額の支度金が必要でした。もし2人の女の子が生まれた場合は、その費用がかさむのを避けて、一人の女の赤ちゃんは捨てられていたのです。
新約聖書の背景
- 使徒パウロの宣教とその背景
- 新約の背景と1世紀の哲学
- 古代ローマ帝国の経済社会
- 古代ローマ帝国の階級社会
- 新約聖書の背景とユダヤ教の発展
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- 新約聖書の背景と中間時代
- 外部リンク ローマ帝国
参考文献
- Ferguson, Everett. Backgrounds of Early Christianity, 2nd ed. Grand Rapids: Wm B. Wwedmans, 1993.
- 桜井万里子、木村凌二。ギリシャとローマ。世界の歴史、第五巻。中央公論社、1997年。
- 村川堅太郎。ギリシャとローマ。世界の歴史、第二巻。中央公論社、1995年。
- 島田誠。古代ローマの市民社会。山川出版、1997年。