コンテンツへスキップ 投稿日:2023年2月22日/更新日:2025年1月15日

新約の背景とローマ帝国の宗教

新約聖書の背景。神殿

新約聖書の背景として、ローマ帝国の宗教を学ぶことは非常に重要です。ギリシャ宗教とローマの宗教の共通した重要なトピック、特に新約聖書に関連したトピックを解説します。

様々な神々

ギリシャ宗教の12の神々はそれぞれが違った役割を持っている、と信じられていました。これらの神々は、人間と同じように感情を持ち、また性的関係を持っていたのです。神々の人間化です。後に神々の人間化は弱まり、神々は霊的な力と考えられるようになります。ローマの人々は、前3世紀ごろからギリシャの12の神々をローマの神々と融合させようとしましたが、すべてが一致している訳ではありません。

Artemis
アルテミス、古代エペソの神

有名な神々の役割を挙げてみます。アルテミス(ギリシャ)とダイアナ(ローマ)は、子宝の神です。アフロディテ(ギリシャ)とビーナス(ローマ)は、10番目の神なので本来なら役割が一致すべきですが、まったく違います。アフロディテは性の神であり、ビーナスは農業の神です。違った神々が、その霊によって違った働きをしていると考えられていたのです。このような背景ゆえに、パウロは1コリント12章で唯一の神、唯一の主、唯一の聖霊の働きを強調する必要があったのです。

運命論

運命論は、ローマ帝国全域に広く信じられていました。星の動きによって運命が定められているとも考えられていたようです。星と運命の関係は、星占いにも発展していったのです。

またこの運命の力は神とも考えられ、運命の神を支配する神々を礼拝するようになっていきました。このようなことを信じていた人たちは、クリスチャンになってもこのような宗教的な迷信を持っていたかもしれません。この様な理由で、使徒パウロは、異邦人クリスチャンに主イエス・キリストに与る祝福と恵みに目を向けるようにと励ましていたのではないでしょうか。

魔力、守り神、様々な迷信

ローマ帝国の宗教
家庭内に置かれた守り神

運命論の他に、ローマ帝国内では魔力や守り神などの様々な迷信が存在していました。魔力は、この世の不思議な出来事を起こす力と考えられていました。現代人は、宗教と魔力は別個のものと考えがちですが、古代の人々には同じでした。

12の神々を最初に説明しましたが、それより弱い神々は守り神のように信じられていました。この守り神は、人を守ることもありますが、同時に人に災いをもたらすような悪戯(イタズラ)をすると考えられていたのです。

守り神の概念は、地方の宗教や家庭にも入り込んでいました。たとえば、ギリシャの宗教の1番の神であるゼウスが、守り神として祀り上げられていました。ローマの宗教でも守り神がありました。どちらもヘビの偶像が、守り神の象徴として飾られていたようです。

団体の宗教とモラル観

ギリシャ哲学が個人を尊重するのに対して、宗教には個人的な信仰という概念はありませんでした。つまり、宗教は人々が集まって初めて成り立っていたのです。異邦人が個人的な信仰によって主イエス様を信じること自体、多くの人々にとって奇異なことだったのです。

1世紀のローマ帝国の宗教にはもう一つ重要な特徴があります。それは宗教とモラル観の別離です。宗教は、善悪についてはまったく語っていません。教えてもいません。倫理観など1世紀のローマの宗教に無かったのです。このような異邦人がクリスチャンになった時に、信仰とモラル観は切り離すことはできないことを改めて認識する必要があったのです。

結論

以上、古代ローマ帝国の宗教について解説しました。1世紀の歴史的、文化的、宗教的背景で、新約聖書の手紙が書かれました。この背景を理解してさらに深く新約聖書の手紙を理解できると思います。

参考文献

  • Ferguson, Everett. Backgrounds of Early Christianity, 2nd ed. Grand Rapids: Wm B. Wwedmans, 1993.
  • 桜井万里子、木村凌二。ギリシャとローマ。世界の歴史、第五巻。中央公論社、1997年。
  • 村川堅太郎。ギリシャとローマ。世界の歴史、第二巻。中央公論社、1995年。
  • 島田誠。古代ローマの市民社会。山川出版、1997年。

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