コンテンツへスキップ 投稿日:2025年1月20日/更新日:2025年2月6日

神の創造と支配:旧約聖書のエッセンス

ヘブル語旧約聖書

旧約聖書の内容を説明します。聖書は旧約聖書(39巻)と新約聖書(27巻)に分かれています。 旧約聖書には、すごくシンプルに簡単にいえば、神の創造と神の支配、イスラエルの信仰の父であるアブラハムの家族の物語、さらにイスラエルの民の歴史が書かれています。旧い契約が書かれている書です。一方、新約聖書はイエス・キリストによる新しい契約が書かれている書と言えます。

この記事では旧約聖書の内容を説明します。旧約聖書の最初の目次を見てください。そこに創世紀からマラキ書までの名前がつづられているはずです。

旧約聖書の概要(39巻)

最初の書である創世紀から、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記まで、天地万物の起源からイスラエルの民が選ばれた歴史が書かれている。

次にヨシュヤ記から、士師記、ルツ記、1サミエル記、2サミエル記、1列王記、2列王記、1歴代誌、2歴代誌までは、カナンの地(今のパレスチナ)に住んだイスラエルの歴史が書かれている。

エズラ記、ネヘミヤ記、エステル記は、カナンの地から追い出されバビロンの地で捕囚となったイスラエルの歴史をたどっている。

その他、知恵文学と呼ばれるヨブ記、詩篇、箴言、伝道者の書(コヘレトの書)、雅歌、哀歌は、イスラエルの民の信仰が詩的文書で書かれている。

そして最後に預言書と呼ばれる書がある。イスラエルがカナンの地とバビロンの地に住んだ時に神によって遣わされた預言者が語ったことばが記されている書。それらの書は、大預言書であるイザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、ダニエル書、12の小預言書であるホセヤ書、ヨエル書、アモス書、オバデヤ書、ヨナ書、ミカ書、ナホム書、ハバクク書、ゼパニヤ書、ハガイ書、ゼカリヤ書、そして最後がマラキ書。

イスラエルの歴史

旧約聖書とは? 

旧約聖書の具体的な内容

プロテスタント聖書では次のように分類されている。へブル語旧約聖書とカトリック旧約聖書は、下記の分類の仕方はしていない。それは旧約聖書の成り立ちと正典を参照にしてください。具体的な内容をもう少し詳しく説明します。

王国が分裂した後、南の王国はユダ、北の王国はイスラエルと表記される箇所があれば、サマリアと表記される箇所がある。同時に、「イスラエル」という表記は、ユダを含めたイスラエルのすべての部族を含んでいる場合もある。この記事では、その不明瞭な点を解消するために、表記を次のようにする。南の王国はユダ、北の王国はサマリアとします。

  • モーセ5書 出エジプト記から申命記には、神がイスラエルに与えた律法が記されている。
    • 創世紀ー神が天地万物(宇宙、自然、人間)を創られた創造のわざ(1-2章)、人間の罪の起源(3章)、ノアの物語(6-10章)、アブラハムとの契約、アブラハムの子孫の物語(12-50章)。
    • 出エジプト記ー1200年頃、エジプトの奴隷であったイスラエルの人々が、主なる神様の業によってエジプトから出てきた記録。出エジプトの時に、神はモーセを主の僕として召し出した。さらにその後、神は、モーセを通してイスラエルの人々に神の契約と律法を与えた。
    • レビ記ー祭司の資格と礼拝における祭司の役割。旧い契約での礼拝と新しい契約の礼拝を比較するうえで、非常に重要な書。レビ記は退屈な書だが、特に新約聖書のへブルの手紙の背景として、読んでおくべき書。
    • 民数記ーイスラエルの民が行くべき約束の地への旅路。
    • 申命記ーエジプトから出てきた後にイスラエルの人々が与えられた契約と重要な律法を、モーセが繰り返し人々に伝えている記録。
  • 歴史書(12書)イスラエル民族の歴史が記されている。
    • ヨシュヤ記ー約束の地であるカナンの地を征服した記録。ヨシュァが、イスラエルのリーダとしてカナンの地に導いた。
    • 士師記ーイスラエルの人々は、カナンの地に住むようになったが、まだ王や支配者がいる国のとして確立されてはいなかった。カナンの地のそれぞれので土地で、イスラエルの各部族をリーダーである士師が治めた記録。
    • ルツ記ー士師の時代におけるルツという女性の話。ベツレヘム出身のナオミと家族は、モアブの地で移住していた。ナオミの夫は死に、2人の息子はモアブの男性と結婚。その息子も死んだ。残された未亡人である一人、ルツはナオミについて行くことを懇願。2人はナオミの故郷、ベツレヘムに着いた。モアブ人であるルツは、神の恵みによってイエス・キリストにつながるオベドを生んだ。
    • 1サミエルーイスラエルの人々は、主なる神に「私たちにも他の国と同じように王をください」と願った。その結果、神はサウロを王としてイスラエルに与えた。主にサウロ王の悲劇の人生が書かれている。
    • 2サミエルー前1000年頃ダビデ王の確立がされた記録。神は、ダビデに「彼の子孫に王国を与える」と約束する。この預言は、イエス・キリストを指しており、主キリストがダビデの子と呼ばれる所以がある。
    • 1列王記ーダビデの子であるソロモン王の地位が確立され、彼は神殿を建てる。しかし、ソロモンは慢心して罪を犯してしまう。その後、前930年頃、ソロモンの王国は南北に分裂する。その分裂の歴史が書かれている。
    • 2列王記ー南と北の王国の歴史が記されている。前721年に北の王国、サマリアがアッシリア王国に占領され壊滅する。その後、バビロン王国がアッシリア王国に代わって、中東を支配する。前586年にバビロン王国がエルサレムを攻めのぼり、ユダの南の王国は壊滅する。エルサレム神殿も破壊され、ユダヤ人はバビロンに移住させられバビロンの捕囚の民になる。
    • 1歴代誌ー創世紀からの系図からダビデ王まで。列王記と歴代誌は、ほぼ同じイスラエルの歴史を辿っているが、まったく違った観点から、歴代誌は書かれている。歴代誌は、バビロニヤ捕囚後に、エズラ記とネヘミヤ記と共に書かれたと考えられる。確かな年代は定かではない。捕囚の民を励ます目的があるために、イスラエルの歴史を肯定的に捉えている。
    • 2歴代誌ーソロモン王から南と北王国の歴史。
    • エズラ記ー前540年頃からバビロンからの帰還と神殿建設の様子が記録されている。
    • ネヘミヤ記ー前450年頃からバビロンからの帰還とエルサレムの壁の建設の様子が記録されている。
    • エステル記ー時代はバビロン王国の支配からペルシャが中東を支配するようになる。このペルシャ王国の時代におけるユダヤ人たちの話。しかし、不思議なことに神の名、神の言葉、神への祈り等は、まったくこの書には出てこない。
  • 知恵文学 (5書)人間の生き方、知恵と愚かさを詩にまとめた諸書。
    • ヨブ記ー人間が経験する試練と不幸の中で、人がどのように対処すべきか考えがえさせられる書。主の御前で義人と認められるヨブに、悪魔であるサタンが目をつけ考えられるすべての不幸と試練を与える。「この不幸はヨブが罪を犯しているが故に起きている考える」3人の友人たちが、ヨブに悔い改めを促し、この話し合いが延々と続く。そして最後に神がヨブに現れる。
    • 詩篇ー神への賛美と賛歌.。詩篇は全部で150篇あるが、それは5つの箇所、1-41篇、42-72篇、73-89篇、90-106篇、107-150篇に分類されている。長い年月の間に編集され、集められたと考えられる。各詩篇の冒頭に、詩編の著者と背景、その詩篇が礼拝の中でどのように使われたかが記されている。多くの詩編がダビデによって書かれている。
    • 箴言ー神の知恵によって人生を送るために書かれた格言のような書。ソロモンが著者または編集したと記されている。箴言に書かれているトピックは、日々の生活のすべてに分野に及ぶ。仕事、結婚、子育て、友人、家族、社会でのマナーなど。
    • 伝道者の書ー罪深い世で生きる人間の空しさや虚脱感を嘆き、人間は苦しむと定められていることを認識しつつも、それでも神を畏れ敬う事の重要性を説いた書。おそらく、聖書の中で日本人の感性に一番合致している書だと思われる。新改訳聖書での表題は伝道者の書であるが、これはギリシャ語に翻訳された旧約聖書のこの書の表題を翻訳したもの。一方、新共同訳聖書ではコヘレトの書である。これは、ヘブル語の単語をそのままカタカナ読みに置き換えられたもの。伝統的には、ソロモンによって書かれたと言われているが、実際のところは不明。
    • 雅歌ー結婚生活の賛歌。性的描写が大胆なために、その解釈は様々。ヘブル語聖書の表題の直訳は、「歌の中の最高の歌」である。ラテン語ではcanticum。ギリシャ語ではaisma asmaton、「歌の中の最高の歌」。日本語聖書、新改訳と新共同訳ともにその表題は「雅歌」になっているが、この翻訳の起源は私には不明です。
  • 大預言書(5書)旧約聖書の預言書の中で比較的サイズの大きな書が、大預言書と呼ばれている。
    • イザヤ書ーアッシリア王国が、南北の王国に攻め上ってくる時代に、イザヤはユダの地で預言している。神の支配と希望がメッセージの根幹。前721年には、北の王国サマリアがアッシリア王国によって滅ぼされる。イザヤの歴史的背景は、イザヤ1章1節と2列王記18-20章から読み取れる。
    • エレミヤ書ーエレミヤは、バビロン王国がエルサレムに攻め上ってくる前620年頃からエルサレムにおいて預言している。587年のエルサレムの陥落後、エレミヤはエジプトへ逃亡ユダヤ人たちに強制的に連れていかれ、エジプトでも神の御言葉を預言している。エレミヤのメッセージは南の王国滅亡に伴うユダの人々の悔い改めのメッセージである。同時に、神がイスラエルの民に将来与える新しい契約と希望を宣べ伝えている。
    • 哀歌ー前587年のエルサレムの陥落を嘆き悲しむ賛歌。同時に、著者は罪の赦しとエルサレムの再興を祈っている。著者は不明だが、伝統的にエレミヤが書いたと主張されている。ヘブル語のアルファベットの22文字が、各節の最初に来るように工夫されて書かれている。詩篇119篇も同様の方法で書かれている。
    • エゼキエル書ーエゼキエルは、エルサレムの陥落という危機的状況下で預言したエレミヤと同時期に預言している。しかし、エゼキエルが預言し始めたのはエレミヤより30年ほど後である。エゼキエルは、バビロンで捕囚の民として過ごしている間に預言をし始めたと思われる。メッセージの主なテーマは、聖なる神が場所を選ばず天地万物を支配している方であること、この方が一人一人に悔い改めを求め、イスラエルという共同体にも悔い改めを求めている。最後の新しい契約を約束して、希望のメッセージを宣べ伝えている。
    • ダニエル書ーバビロニア捕囚の時代に、ダニエルはバビロンに連れていかれ、バビロン王国とペルシャ王国の要職についている間、神の御言葉を預言した。前600年頃から540年頃までの記録と預言が記されている。テーマは、王国と呼ばれる諸国を支配する神の権威とキリストの御国に関する預言。
  • 小預言書 (12書)旧約聖書の預言書の中で比較的サイズの小さい書が、小預言書と呼ばれている。
    • ホセヤ書ーアッシリア王国が北の王国サマリアに政治的プレッシャーをかけてくる危機的状況の中、前750年~720年までホセアは預言した。主なメッセージは、北の王国サマリアの人々が不義であっても、神は民を愛で憐む。
    • ヨエル書ー時代不明、主なメッセージは、神の裁きと来るべき主の日。聖霊が主キリストを信じる人に注がれるという使徒ペテロのメッセージは(使徒2章17-21節)は、ヨエル2章28-29節からの引用。但し、ヘブル語聖書に準拠している新共同訳では3章1-2節。
    • アモス書ー前760年頃、ヤロブアム王の統治下のもと、北の王国サマリアが最も栄えた時期にサマリアで預言した。アモスは南王国ユダ出身の預言者だったが、北に行って預言した。メッセージは、社会正義の神様の裁き。
    • オバデヤ書ーオバデヤが預言した年代は不明。メッセージは、エドム人たちはユダの人々及びエルサレムに対して犯した罪に対する神の裁き。
    • ヨナ書ー預言者ヨナは、ヤロブアム王の時代、前780年頃預言しているが、ヨナ書に関する背景はまったくない。ヨナは、アッシリア帝国が中東全体を支配していた時に、ニネベに悔い改めのメッセージを告げている。メッセージは、「異邦人にも神の愛が注がれている」。主イエス・キリストは、ご自分の3日目の復活とヨナのしるしと比較している(マタイ12章40-41節)。
    • ミカ書ー前750~750年頃に南の王国で預言した。イザヤが、国際政治に関連してユダヤの王に預言したのに対して、ミカは一般庶民の生活を思い部族のリーダーたちに預言した。メッセージはユダとエルサレムの滅亡。メシアがベツレヘムで生まれると預言されている。
    • ナホム書ーアッシリア帝国が崩壊する前630年前後に、ナホムは預言した。そのメッセージは、神のアッシリア帝国の首都ニネベに対する裁き。このメッセージは、預言者ヨナの「ニネベに悔い改めを促したメッセージ」とは対照的である。
    • ハバクク書ーバビロン帝国が隆盛を誇った前600年前後に、ハバククは預言した。1-2章では、ハバククが主なる神に、ユダよりももっと邪悪なカルデヤ人によってユダが滅ぼされるのかという不平・不満をもらしている。3章では、ハバククは悔い改め神の権威にひれ伏し祈っている。2章4節「義人は信仰によって生きる」がローマ1章17節で引用されている。
    • ゼパニヤ書ーヨシア王の時代、前630年ころにゼパニヤは預言した。預言者エレミヤと同時代の預言者。列王記には記録がないが、ゼパニヤはヨシア王の改革に関与したのかもしれない。主の日という表現が、預言書アモスと同じように使われている。神の最後の審判、裁きを思わせる預言でもある。
    • ハガイ書ーペルシャの時代、捕囚の民であったユダの人々は、ゼルバベルのリーダーシップの下、前538年以降バビロンから数回に分けて帰還している。帰還した人々は神殿を再建し始めたが、途中で止めてしまう。そのような時に、ハガイは預言した。その結果、前516年に神殿は完成した。
    • ゼカリヤ書ー歴史的背景はハガイとほぼ同じ。ゼカリヤもハガイと同様に、ユダの人々を励まし神殿建設に関与した。1-8章は、神殿建設に関連して神の働きと励ましのメッセージが書かれている。後半は9-12章は、神殿建設とは関連がないと思われる。黙示文学の様式で書かれており、メシアを通しての終末的メッセージが書かれていると思われる。
    • マラキ書ー旧約聖書の最後の預言者。前450年頃、捕囚からの帰還した人々のリーダーであったネヘミアの時代に、マラキは預言したと思われる。イスラエルの人々の不信仰な心と行いが列挙されている。主の道を準備するメッセンジャーが預言者エリアに例えられ来ると預言されている。新約聖書では、このメッセンジャーはバプテスマのヨハネであることが明らかにされている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です